資金調達をマーケティングする


資金調達のマーケティング

2015年4月の国内銀行の貸出金利の平均は1.16%となっており、

2007年末の直近のピークから0.8%も下がり、銀行の貸出金利の低下が進んでいます。


この状況を利用して、

大手企業は、国内で超低金利で低コストの資金を調達し、海外企業の買収などを積極的に行っています。

また、海外企業も2014年には3700億円(前年比33%増)の融資を日本の銀行から受け、超低金利のメリットを享受しています。


現在の日本の超低金利の状況は、企業にとって低コストで資金調達できる、

事業拡大のための大きなチャンスといえます。


図表1 国内銀行の貸出金利

当然ながら、企業が事業を行うには資金が必要となります。


しかし、資本市場へのアプローチについて体系的な取り組みを行っている中小企業は実に少ないと言わざるをえません。



そもそも、企業とはなにか?という根元に立ち返ってみれば、

企業の本質は、資金・労働力・設備・原材料を調達し、経済的付加価値を創出することにあります。


図表2 企業活動の基本モデル

資本市場へのアプローチ方法について、

体系的な取り組みが確立されていない企業は、

企業としての機能の半分が失われてしまっているといっても過言ではありません。



これからインターネットビジネスを始める起業家も、

新規出店を計画している小売チェーンも、

資金繰りの困難に直面している中古車ディーラーも、

在庫・売掛金を圧縮して経営効率を高めたい機械部品商社の経営者も、

新規事業の立ち上げを行う急成長する大企業の事業責任者であっても、

それぞれのニーズを満たすコストの安い最適な資金調達方法を見つけだし、

選択しなければなりません。

(結果として、それが既存事業の内部収益からの調達であったとしても)



そして、資金提供者に対しては、

事業のリスクを満たすリターンが見込めるということを、

十分納得させる必要があります。



では、企業はどのように事業に適切な資金調達方法を選択し、

資金提供者に資金使途の正当性を説明すれば良いのでしょうか?


その答えを導き出すのが、

資金調達のマーケティング』です。



イノベーションこそが競争優位の直接的要因となる現在、

資金調達のマーケティングは、

あなたの会社の独自の優位性をつくりだし、

ライバルとの決定的な差別化要因となる可能性があります。




資金調達方法が多様化するいま、

企業経営者はライバル企業またはベンチマーク企業が、

なぜ躍進しているのかについて、表面上の商品・サービスの優位性だけでなく、

財務戦略の側面からも検討すべきでしょう。


ライバルは取引債権を担保にして、

事業成長に必要な新たな資金源を得ているかもしれません。


それとも新たに取得する資産を担保にして証券を発行して、

より迅速に事業拡大を実行し、有利なポジションを確立しようとしているかもしれません。


もしくは行政の助成金制度、補助金事業を有効に活用して、

顧客に対する提案のコストを下げているかもしれません。




資金の調達手段には、

現在、以下のように様々な形態があります。



資金調達手段の形態


・自己資金

・内部的に生み出されるキャッシュフロー

・普通株式

・優先株式

・コンバーチブル・ノート

・新規株式公開(IPO “新規株式の公募&売り出し”)

・ダイレクトリスティング(直接上場 “既存株式の売り出しのみ”) (2020.11.18 加筆)

・SPAC(特別買収目的会社)の上場 (2020.11.18 加筆)

・公募増資

・第三者割当増資

・新株予約権

・社債

・転換社債(CB)

・メザニンファイナンス

・自治体の制度融資

・中央省庁の支援事業

・地方自治体の支援事業

・日本政策金融公庫の融資

・信用保証協会の保証制度融資

・民間金融機関のプロパー融資

・プロジェクトファイナンス(ノンリコースローン)

・リース ・リースバック ・クラウドファンディング

・新規仮想通貨公開(ICO イニシャル・コイン・オファリング) (2018.2.3 加筆) ・ソーシャルレンディング ・資本性ローン ・ビジネスローン ・シンジケートローン

・劣後ローン

・仕入先との企業間金融

・コマーシャル・ペーパー

・資産担保融資

・売掛債権担保融資(アセット・ベースト・レンディング)

・売掛債権の売却(ファクタリング)

・株式担保融資

・資産の証券化

・SPC(特別目的会社)を使った資産流動化

・事業譲渡による資金調達




また、資金調達のマーケティングの対象となる資本市場でも、

数多くのプレイヤーが存在しています。



主な資金提供者


・創業者及びその縁故者

・共同経営者

・エンジェル投資家

・インキュベーター

・ベンチャーキャピタル(VC)

・プライベート・エクイティ(PE)

・戦略的投資家(事業会社)

・コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)

・機関投資家

・個人投資家

・従業員

・ユーザー (2018.2.3 加筆)

・取引企業

・提携企業

・政府系金融機関

・都市銀行

・地方銀行

・信用金庫

・信用組合

・金融仲介会社

・ノンバンク

・リース会社

・行政機関




そして、各資金提供者はそれぞれの立場や意図にもとづいた独自の基準に従って、

資金拠出の可否や、規模を決定します。


例えば、民間の金融機関では「融資の基本原則」に沿って、融資の判断を行っています。



融資の基本原則 ※ >


・安全性の原則

・収益性の原則

・流動性の原則

・成長性の原則

・公共性の原則


※金融機関が融資を行う際に考慮すべき基本原則 。「融資の5原則」とも言う。




企業経営者は、

自社に適切な資金調達手段を選択し、それぞれの資金提供者の志向、目的、投資基準を理解し、

継続して一貫したコミュニケーションを行っていく必要があります。



多様化する資金調達をマーケティングし、

経営ビジョンへのロードマップとなる事業計画を見直すことで、

あなたのビジネスは大きな飛躍のきっかけを掴めるでしょう。


資金調達のマーケティングは、中小企業の経営上のボトルネックとなっているケースが多いため、

中小企業にとってのほうが、よりインパクトの大きい威力のある取り組みとなることが期待できます。



クラフトでは、

クライアント企業の資金調達のマーケティングを以下のプロセスで組み立てています。


図表3 資金調達のマーケティング・プロセス

自社のビジネスモデル、財務状況にあわせて

ターゲットを絞り込み、自社の展望、特徴をポジショニングし、

投資家への提案を組み立て、アプローチのプロセスを設計し、管理していきます。




図表4 資金調達のMLB

資金調達のマーケティング・プロセスの設計にあたっては、

クラフトが「資金調達のMLB」と呼んでいる

次の3つの要素について検討する必要があります。



資金調達のMLB


・自社のビジネスモデル (Business Model)

・自社の事業ライフサイクル (Business Life Cycle)

・事業リスクと財務リスクのバランス (Balance of the Business Risk and Financial Risk)




中小企業も資金調達のマーケティングを行うことで、

成長のためのロードマップが明確になり、解消すべきボトルネックも明らかになります。


資金調達のマーケティングの過程の中で

自社の戦略、事業計画も現実的かつ具体的で明確なものとなっていくことでしょう。